生命保険のサイト

生命保険で損をしないために

「とりあえず契約」の危険

      2013/02/10

コンビニエンスストアに並ぶお菓子から、自動車、戦闘機に至るまで、世に溢れる製品には量産効果というものがあります。簡単にいうと、「たくさん作れば単価は下がる」ということです。手に取れる形のない生命保険も同じように、多くの人が加入すればリスクが分散され、単価を下げることが可能になるはずです。そして大量販売は大きな会社ほど有利になります。

自動車の製造は様々な設備投資が必要であり、量産効果を得るには会社の規模は大きいほど有利です。世界有数の自動車メーカーとなったトヨタ自動車の製品が、高いコストパフォーマンスを獲得していることは誰もが納得するでしょう。

生命保険においても同じように考える傾向があります。そのため「大きな会社の方がよいだろう」という言葉はよく耳にし、この感覚が「まあ、大丈夫だろう」という安心料的なわけのわからない契約動機となってしまいます、これは大きな間違いです。

自動車であれば、メーカーへの信頼だけでなく、見た目、機能、乗り心地を肉体的感覚として捉えることができ、同じような他社の車種や違う販売店と価格などを比較することも容易です。

生命保険には、肉体的感覚がないので比較し難いといいます。これは確かにそうなのですが、実は生命保険は形がない分、少し理屈がわかれば自動車よりも簡単に中身が見えるのです。

国内において規模の大きな生命保険会社のおすすめ商品ほど、コストパフォーマンスは悪い傾向があります。「生命保険は実はシンプル」を理解され、比較されるとコストパフォーマンスの悪さが前面に出てしまいますから、消費者が「よくわからない」ようにし、「大きな会社だから信頼して」という流れをつくろうとします。

約款だけでなく、パンフレットや設計書もそのことを意識して、複雑かつ、生命保険会社にとって都合のよい部分のみが大きく理解しやすく構成されています。

生保おすすめの複雑かつ利益率(生保の)が高い大型新人「アカウント型」保険については、後ほどケーススタディなどで詳しく触れますので、ここでは簡単に計算でき、「お子様のために」と営業しやすい学資保険を例に「とりあえず契約」の不利益を見ていきます。

まずは、下の図を見てください。

 

hoken-minaoshi_025

大手生保のおすすめ学資保険イメージ

 

漢字系生保の学資保険パターン例です。「子供の将来のためだし」という親心を最大限活用しています。「とりあえず入っておくか」と思う前に本当に子供のことを考えるなら、以下のようにチェックしなくてはいけません。

<総額を知る>

月払の保険料は15,200円です。22年満期ですから、22年分、264か月の払込総額は401万2,800円となり、大きく強調されている受取保険金の総額は330万円です。単純計算にして71万2,800円のマイナスになります。

<特約のチェック>

子供の医療、災害、契約者(父親)死亡時の育英年金という3つの特約がごてごてと付加されていますが、いずれも不要です。先に触れた、シンプルイズベストの法則で考えてください。この保険の目的は「子供の教育資金準備」、要するに貯蓄です。貯蓄を邪魔する3つ特約は「目的外」ですから、結論としては「問答無用、いらない」でよいということを念頭におきつつ、各特約の考え方を書いていきます。

 

◎子供の医療保険

後に詳しく書きますが、国や地方自治体の公的保険制度だけでも十分手厚いものであり、仮に手術を要する場合でも高額医療費の補助制度があります。71万2,800円もの大幅な元本割れをしてまで払うものとは思えません。本当に困るのは、一家を支える働き手が倒れた時ですから、余裕資金があるならば、親の保険を増額するべきです。

 

◎子供の災害保険

災害時に死亡もしくは高度障害となった場合に1,000万〜2,000万円ほどの保険金額でしょう。不幸にして万が一子供が死亡したとしても、保険金がどうしても必要ですか? そうではないはずです。第一確率が低すぎます。こちらも、その余裕は働き手の保障にまわすべきです。

 

◎契約者(父親)死亡時の育英年金

シンプルイズベストの法則ですから、「子供が22歳になるまでに自分が死んだら」に備えるなら、自分に20年の定期保険をかけるべきです。加入直後、0歳で契約者が死亡したとして、受け取る育英年金の総額は1,000万円になります。

しかし、この1,000万円をライフネット生命の定期保険(20年)でカバーした場合、30歳男性の月々の保険料は1,137円、20年間の支払総額は27万2,880円ですみます。しかも、育英年金は年単位で支払われますから、まとまった運用はできません。定期保険であれば、即座に全額支払われます。仮に、この1,000万円を22年間複利1%で運用すると、1,244万7,159円になり、244万7,159円の運用益を生み出すことになります。

<都合のよい数字に注意>

モデルケース赤字の最後、育英年金がないパターンにおいて、197万2,940円の総支払額に対して230万円が受け取れるとありますが、これは「一時払」の場合です。一時払とは最初に全額197万2,940円を一括支払いするということです。毎月払いにすると、11,381円になり、これを18年間支払うと245万8,296円になります。受取額に対して15万8,296円のマイナスです。

「子供の将来のためにとっておこう」と検討を始めたにもかかわらず、増えるどころか結果的に元本が減ってしまうことになります。18年間資産が拘束され、しかも、預金と違って途中解約では払込額を下回ることが多いです。

学資保険ではこのようにシンプルに計算できますが、大型の商品はこのような都合のよい数字が積み重なりわかりにくいため、気をつけなければいけません。

 

 - あきれた、日本の生命保険