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太陽生命、『100歳時代年金』

   

中高年をターゲットにした販売戦略の一端

『100歳時代年金』は、平成29年(2017年)10月1日、太陽生命保険から発売されました。同社は、前年3月には『ひまわり認知症治療保険』を発売しており、高齢者への販売攻勢を強めているようです。

これは「太陽の元気プロジェクト」の一環のようです。別項にて商品のモデル例を計算してみると、平均以上に早く介護状態になり、かつ長生きしなければなかなか元はとれないと予想されます。以下、プレスリリースに掲載されたセットプラン例を検証してみます。

プラン例を検討

「セットプラン ご契約例」
(終身生活介護年金保険〔Ⅰ型〕 +長寿生存年金保険)
契約年齢:50歳
保険料払込満了年齢:70歳
月額保険料:男性 24,941円、女性 33,428円
 男性の内訳:終身生活介護年金保険 6,817円、長寿生存年金保険18,124円
総支払額(50歳〜70歳):男性 598万5,840円、女性 802万2,720円

「終身生活介護年金保険」は、介護年金の支払事由に該当した場合に、毎年48万円を制限なく受取ることができます。支払保証期間5年です。支払事由は次の通りです。
〈支払事由〉
被保険者が責任開始期以後の傷害または疾病を原因として、つぎのいずれかの状態に該当したとき
ア.当社の定める要生活介護状態に該当し、その状態が180 日継続したと医師により診断されたとき
イ.公的介護保険制度の要介護2以上に認定されたとき

「終身生活介護年金保険」は死亡保障なし、「長寿生存年金保険」は死亡保障があります。70歳の年金支払開始までに死亡した場合、解約返戻金が支払われますが、支払額を上回ることはなく、69歳時に死亡または解約した場合の返戻率は約72%です。

元を取るのは難しそう

「終身生活介護年金保険」の受取額は年額48万円、「長寿生存年金保険」は年額24万円です。前者は65歳以降、支払事由である要介護2等の条件を満たした場合であり、後者は70歳以降に生存していれば支払われます。

内閣府による2050年における平均寿命の予想数値は、男性83.55歳、女性90.29歳です。(参考:平均寿命の推移 – 内閣府)http://www8.cao.go.jp/kourei/kou-kei/24forum/pdf/tokyo-s3-2.pdf

要介護2の平均年齢はわかりませんが、要介護の年齢構成はわかります。厚生労働省の統計によると(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/4-2.html)、「80~84歳」が23.9%で最も多く、次いで「85~89歳」が22.8%となっています。ここから要介護2を、平均寿命の延伸は勘案せず80歳と設定します。

70歳から24万円の生存年金を受け取り、80歳から年間48万円の介護年金を受取るとして、上記の予想平均年齢に則り、男性83歳、女性90歳で計算すると、「終身生活介護年金保険」は男性144万円(女性480万円)、「長寿生存年金保険」は男性312万円(女性480万円)です。合計すると、次のようになります。

総支払額(50歳〜70歳):男性 598万5,840円、女性 802万2,720円
総受取額(推計):男性 456万円、女性 960万円
損得:男性 142万円の損、女性 157万7,280円の得

夫婦だと支払総額は約1,400万円に

上記の計算は、できるだけ平均をから推計したものです。同年代の夫婦二人で加入したとすると、ほぼ損得なしです。ということは、受け取れないリスクがかなり存在する保険よりも、総支払額である1,400万8,560円を現金のまま使用した方が断然良いという気になります。

加入しようという場合には、まず、かなり手厚い「公的年金・医療・介護保険」を良く調べてから1,400万8,560円支払う価値があるかを判断しなくてはいけません。しかも、50歳〜60歳は、子供の学費のうちでもダントツに高い出費となる大学生を抱えるご家庭も多いはず。男性 24,941円、女性 33,428円、夫婦で加入すると月58,369円という支払額は安くはないはずです。

もしそれでも、使ってしまうから生命保険がよいという場合には、受け取れるかどうかわからない商品よりも、死亡保険で確実に受取金を確保するこも検討されてはいかがでしょうか?

ちなみに、オリックス生命の「終身保険ライズ」の場合、50歳男性が受取額500万円(『100歳時代年金』の推計受取額456万円をカバー)、70歳払込終了、保険期間終身で加入すると、月額保険料は19,330円となり、『100歳時代年金』の男性50歳加入、70歳払込終了の24,941円を大きく下回っています。

どんな保険でも結局は自分や家庭の金の問題ですから、電卓片手に入らないということも含めて様々な選択肢を検討してみてください。

(画像は本文とは関係ありません)

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