積立保険(終身保険)
名前の通り、保険料を積み立てて、終身にわたり死んだら保険金が出ます。掛け捨てではなく、解約時には払戻金があります。利率の良い頃は、保障を受けつつ貯蓄もできるという捉え方もされていましたが、今は金利が安すぎて貯金代わりとは考えにくいものがあります。
保険料を決める基本は、死亡率(生保標準生命表)と予定利率、付加保険料です。このあたりは別記事「生命保険の構造」をご覧ください。
払った保険金全てに金利がつくわけではない(付加保険料)
生命保険会社の手数料です。手数料というと安く感じますが、そうはいきません。付加保険料(手数料)は生命保険会社によって変わり、また、年齢や商品によっても違います。基本非公開のブラックボックスなのですが、一社だけライフネット生命が公開しています。
商品によって異なりますが、ライフネット生命の公表している付加保険料(手数料)は18%~51%、平均は25.6%です。(参考資料「保険料内訳表」)
ライフネット生命は、比較的新しくできたネット専業の生命保険会社です。多くの高給社員、営業員、代理店への手数料、たくさんの土地建物を抱える日本生命や明治安田、住友など、老舗漢字系生保がライフネット生命より付加保険料(手数料)が安いとは考えられません。ということで、40%と勝手に仮定させてもらいます。
月々こつこつと保険料を払い、累計100万円となったとすると、その内40万円は手数料(付加保険料)として生命保険会社が予め抜いているということです。そして、残りの60万円を純保険料といい、これに対して利率が付きます。
銀行の金利であれば、100万円を年利1%(税引後0.8%)で預けると、100万8,000円。
100万円✕101%=101万円
101万円ー(10,000円✕0.2%)=100万8,000円
しかし生保だと、100万円預けて金利1%といっても、手数料を40万円抜かれた60万円に金利がつきます。
100万円ー40万円=60万円
60万円✕101%=60万6,000円
利子が8,000円と6,000円、100万円で2,000円の違いか大したことないかな、と思ったら騙されています。100万8,000円ー60万6,000円、40万2,000円が差額です。
生保は、この差額で死亡保障をつけており、保険金が100万円なら保険料の累計が20万円でも死んだら100万円が受け取れますから、単純に銀行と比較はできませんが、自分自身がまずは構造を理解するためにあれこれと計算してみました。
生保はこの他に運用収益でも儲けています。予定利率を国債の金利以下にしていますから、国債で運用すれば利益があがるようになっています。
ちなみに、日本生命の平成27年度(2016年度)の国債保有高は、20兆1,014億円、他に地方債が1兆2,848億円、社債が2兆4,909億円となっており、公社債の合計は23兆8,772億円でした。
平成29年(2017年)現在、国債(10年もの)の金利は0.049%ですから、ざっくりこれで計算すると国債だけで9,849億円の利息を受け取ることになります。損益計算書をみると、平成27年度(2016年度)の利息や配当金等の収入は1兆3,717億円となっています。
話は少しそれてしまいましたが、やはり、保険は貯金とは違うということが理解できました。
解約時の受取額
22歳で契約し、80歳で死亡したとすると57年、半世紀以上もの長いつきあいになる商品ですから、途中で何があるかわかりません。解約した場合には受け取り金が発生しますが、払い込んだ保険料を解約時受取額が上回るのは22歳契約なら約30年くらいかかります。
10年とか20年、解約して損する時期に支払いがきつくなりそうならば、早めに払済にしておけば、それまでの払込保険料に応じた保障額となって、保障は継続されます。詳しくは保険のやめ方の項をご覧ください。
厳しい低金利時代
0.40%という史上最低利率のいま、日本最大手、日本生命の商品は現在どうなっているのか、価格をみてみます。
〈予定利率1.15%〉
◎日本生命:終身保険、500万円、22歳契約、60歳満期、男性
月払い保険料:9,390円
9,390円✕12か月=11万2,680円
11万2,680円✕38年=428万1,840円
上記の保険は、予定利率1.15%です。平成29年4月1日から保険の利率が下がり0.40%となります。日本の生保史上ダントツでトップの低利率です。利率が下がった後の数字は正確にはわからないので、予想してみます。
40歳契約、60歳払込、300万円の終身保険の金額はわかっていて、月払い保険料は利率改定前が11,178円、改定後が2,859円(27.3%)アップの13,653円です。これに沿って27.3%アップしてみます。
〈予定利率0.40%の予想金額〉
◎日本生命:終身保険、500万円、22歳契約、60歳満期、男性
月払い保険料:11,953円
11,953円✕12か月=14万3,436円
14万3,436円✕38年=545万568円
あれ、補償金額を超えてしまいました。金額の確かな300万円の方も計算してみます。
13,653円✕12か月=16万3,836円
16万3,836円✕20年=327万6,720円
なんだ、これも支払保険料が保障金額を超えていますね。
ただ、解約時受取金には解約返戻金の他に積立配当金がつきます。恐らく保険料払込満了の60歳時には、500万円のパターンで55万円くらいになり、あわせればちょうど払込額の545万568円くらいになりそうです。
いずれにしても、この利率(0.40%)ですと、魅力は純粋な死亡保険の機能ということになります。となると、自分なら子供が生まれた時に、定期保険(掛け捨て)に入り、子供が高校もしくは大学を卒業する18歳~22歳までをカバーするようにします。
28歳で第一子誕生、30歳で第二子誕生として28歳から20年、保険金1,000万円を考えます。オリックス生命の定期保険「ブリッジ」なら、28歳男性で月の保険料は1,512円、25年にすると1,726円。こちらの方がよさそうです。